春の扉 ~この手を離すとき~
妙子おばさんはずっと泣いていて変だし。
もしかしてこの部屋にいるから、おばあちゃんは病気になったのかもしれない。
ここにおばあちゃんがいたらダメ、早くここから出してあげないとって思った。
『みお、ここきらい。おうちにかえろ? かえろうよー 』
『美桜、……ほら笑って? 可愛い顔を……見せて 』
『おばあちゃん、はやくかえろっ 』
『おばあちゃんはね、桜の木になるの。ずーっとずーっと……、美桜を見守っているからね。……だから、泣くことなんてない、のよ』
それがおばあちゃんと交わした最後の会話になった。
そのすぐあとにおばあちゃんの意識はなくなって、2日後にわたしを残して旅立ってしまった。
青い空を見上げると、涙はボロボロと頬を伝い落ちていく。
「おばあちゃん、今年もまた、あの日になったよ……」