春の扉 ~この手を離すとき~
わたしはブレスレットを慎重に取り出すと、切れてしまわないように注意しながら、どうにかこうにか左の手首につけた。
そして似合っているのか見てみたくて、腕を空にかざすと、ブレスレットはキラキラと控えめに陽の光を反射した。
「………きれい」
思わず声に漏らしてしまった。
その優しい輝きは、まるで桜の花々の隙間からこぼれてくる木漏れ日みたいで、わたしの心を落ち着かせる。
そして今朝からの重く苦い気持ちに光を射して、浄化してくれたような気がした。
「素敵なプレゼントをありがとう。ずっとずっと大切にするね」
わたしは桜の木に微笑むと、ブレスレットが手首に流れあたる感触を楽しみながら、お礼に温かな紅茶をいれなおした。