春の扉 ~この手を離すとき~

それからはあっという間に冬休みが過ぎていき、明後日からは学校が始まってしまう。
もう少しここでのんびりと過ごしたかったけれど、明日には戻らないといけない。


結局、年末年始は妙子おばさんの家で過ごすことになった。
あの人が来ないことがばれるのは時間の問題だったから
『お母さん、仕事で来れなくなったみたい』
とまた嘘をつくしかなくて。


妙子おばさんのところで最後の夕食を終えて、おばあちゃんの家に帰ってくると、置きっぱなしにしていたスマホが点滅していることに気がついた。



取ろうと差し出した左の手首には、桜のブレスレットが暖炉の炎をて控えめにキラキラと反射させた。

それを見るだけでうれしくなる、というか安心する。


スマホを開くと文乃からの

『みんなで初詣&初カラオケをしてきたよ』

というメッセージ。

それと一緒に何枚かの写真が添えてあった。


神社でおみくじをひいていたり、カラオケで盛り上がっていたりと、楽しそうで素敵な写真ばかりだけれど。

メンバーは文乃と純輔と智香。
そして、……健太郎くん。
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