春の扉 ~この手を離すとき~

「ごめんなさい、明日はちょっと」

「……あぁ、そうだよな。疲れてるよな」


わたしが謝った理由を、健太郎くんは健太郎くんが納得するように決めた。

それから気まずい無言の時間が、耐え難い時間が訪れてしまった。


はやく別れたいことを言わないといけない。


「……健太郎くん、あのね。……わたし、これ以上はお付き合いできない」

「へ? 何で? 」


軽く聞き返してくる健太郎くん。
あんなことをしておいて、理由を言わないと分からないの?

わたしは言葉を失ってしまった。


健太郎くんはわたしからの返事を待っているのか、何も言ってくれない。

それからしばらくまた無言の時間。

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