春の扉 ~この手を離すとき~

「……本当にごめんなさい。じゃあ切るね? 」


耐えきれなくなったわたしが電話を切ろうとすると


「待って美桜。ちょっと落ち着こうぜ、な? 」


と健太郎くんの大きな声が聞こえてきた。

落ち着くもなにも……。
もしかしてわたしが動揺しているとでも思われているの?


「もしかしてまだ公園でのことを怒ってたりしてる? まぁ、あれは俺も悪かったとは思ってるからさ」


あまりにも軽いというか簡単な言い方。

『まだ』という軽い言い方にわたしは耳を疑ってしまった。
キスをするということの重みが、わたしたちは全然違う。

それに『俺“も”』ってどういうこと?
わたしも悪いってことなの?


「そのことだけじゃなくて、あの、」

「とりあえず落ち着けって、な? それに電話じゃ伝えたいことも伝わらないだろ? 学校始まったらゆっくり話を聞いてやるからさ、な? 」


まるで、動揺しているわたしが健太郎くんになだめられてる感じになっているし。


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