春の扉 ~この手を離すとき~

「ちょっと美桜聞けよっ。 健太郎の奴さぁ今日から朝練してるんだぜ」

「さすがレギュラー様。抜けがけしすぎー」


相変わらずテンションの高い文乃と純輔。


「こんなに寒いのに熱心なんだね」

「動けばすぐ暑くなるし」


話をふられたからには無視もできない。
みんなの雰囲気からだと、健太郎くんから休み前の出来事は聞いてなさそうだった。

それならば『いつも通り』をするしかない。


「それに鈍った体を動かしただけだっての。まぁ、俺みたいな天才は努力する必要もないんだけどな」

「なんだとーっ」
「凡人なめんなよー」


健太郎くんは『抜けがけ』と言われたお返しなのか、遠回しに自称凡人の文乃と純輔に嫌味を言って挑発して楽しんでいる。

でも1年生でレギュラー入りなんだもんね。
きっとそれだけの努力をしているんだと思うと、想像はできないけれど感心はしてしまう。
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