春の扉 ~この手を離すとき~

「別にいいじゃん。子供じゃないんだし、ばあちゃんも分かってくれるって。なんなら俺から頼んでやろーか?」


でも健太郎くんには通じなかったみたい。

そこでみんなが黙りこんでしまった。

けれど健太郎くんはその様子に気がついていないようで、期待をこめてわたしを見ている。



「22日がね、美桜のおばあさまの命日なんだよねー。だからすぐに行きたいんだよねー」

「昔っから毎月22日はお墓参りって決まってるもんな」


文乃と純輔がわたしに代わって説明してくれた。


「うそだろ? 毎月って学校あるときは休んでんの? 」


驚くというより呆れた顔をしている健太郎くん。
まぁ健太郎くんは知らないのだから仕方ないけれど。


「うん、わたしおばあちゃん子だったから。さすがに学校の行事があるときはずらしているけれどね」

「なにそれ、めっちゃうらやましいじゃん」


……うらやましい?


今、うらやましいって言ったんだよね?
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