春の扉 ~この手を離すとき~
「その天才様に付き合わされるこっちの身にもなって欲しいよ。私は寒くて仕方ないのに」
智香がうんざりした顔をするけれど、でも世話をかけさせれることが嬉しそうに見えた。
幼なじみなだけあって2人は本当に仲がいいというか、知香が面倒見がいいというか。
お互いが遠慮なく頼りあえる関係がうらやましくなる。
「おばあちゃん家はどうだったの? 」
「やっぱり落ち着くー。ずっと寝正月だったから少し太ったかも」
興味津々に聞いてくる知香。
わたしは満喫感を込めた返事をしながら背伸びをしてみた。