春の扉 ~この手を離すとき~

「美桜ぉ、そのブレスレットめっちゃいいねー」


文乃がわたしの左手首に気がつくと、見せて見せてと制服の袖をまくり始めた。


「それ買ったの? あの店にあったやつだよね」


智香が驚いたように聞いてきた。

そう言われれば、健太郎くんのプレゼントを選びに行ったとき。
ショッピングセンターの、あのアクセサリー店にあった物とよく似ている気がする。


「あ、もしかして健太郎から? 」


智香が別の話題で純輔と話はじめてる健太郎くんに聞こえないように、小声で聞いてきた。


「え、違うよ。おばあちゃんの知り合いからのプレゼントなの」

「だよね、健太郎にそんなセンスも資金もあるわけないし」


納得いくように智香は苦笑いを浮かべているけれど。

でも、どういうこと?
桜の木があの店に買いに行ったってこと?


その間に文乃が勝手に外そうとしていたので、わたしは慌ててブレスレットを押さえて阻止をした。

無言のまま首を大袈裟に振って『だめだめ』と伝えると、残念そうな文乃は何かひらめいたようで。

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