春の扉 ~この手を離すとき~

「健太郎、あんたには関係のない話だから」

「なんで? 関係ありありだろ」


知香が止めようとしてくれたけれど止まるはずもない。

というか『関係ありあり』ってことは、健太郎くんの中ではわたしはまだ“彼女”ってことなんだよね。


「……文通だけだからよく知らないんだけれど」

「まじかよ。それって顔も見たことないってことだよな? 」


わたしの返事に、心配しているというよりは理解できなくて呆れているという感じを丸出しの健太郎くん。


文乃と純輔は「始まっちゃった」という感じで、ばつが悪そうに視線を合わせている。


だから健太郎くんの前でこの話はしたくなかったのに。

頭ごなしに否定されるのなんて簡単に予想できたし、このパターンはお墓参りをからかわれたときと似ている。

本当はこのまま話を終わらせたいけれど、でも文通相手は“変な人”でないことは分かって欲しいという気持ちで、思わず返事を返してしまった。

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