春の扉 ~この手を離すとき~


「えー、新年早々また君たちなの? とりあえず君は自分の教室に戻ってくれる? 」


先生はあきれたように苦笑いしながら健太郎くんをうながした。


『また』って、そんな言い方……。


いつのことと一緒にして言っているの?
文化祭? それとも公園のこと?


どっちにしても思い返すと嫌な気持ちにしかならないし、『これまで』と『今』を一緒しないでほしい。


わたしは先生と健太郎くんを見たくなくて、顔を背けた。


少ししてダンッと扉を強く閉めた音がした。

きっと健太郎くんが教室から出て行ったのだと思う。


「ほら、遠野も席に戻って」

「……」


先生にうながされるように背中を軽く押されて、わたしは渋々と席に戻った。

恥ずかしさと悔しさで泣いてしまいたい。
でも泣けばもっと悔しくなるような気がする。


涙をこらえたまま、窓の外に目を向けた。


空はどんよりとした雲に隙間なく隠されてしまい、さっきまで差し込んでいた朝の光は完全に遮断されてしまっていた。


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