春の扉 ~この手を離すとき~
雪の花
結局その日は、健太郎くんは教室に顔を出すことはなかった。
文乃たちには1日中気をつかわせてしまって申し訳ないと反省はしたけれど。
でもわたしから健太郎くんに歩み寄るつもりなんてないし、もし謝られてきても受け入れるつもりにはなれない。
放課後、わたしはみんなの部活が終わるのを待たずに1人で帰ることにした。
待っていて健太郎くんと顔を合わすのは嫌だったし、余計に文乃たちに気をつかわせてしまうし。
下駄箱を出ると小さな雪が降っているのに気がついた。
風のない冷たく暗い空から、何の主張もせずにチラリチラリと静かに降ってくる。