春の扉 ~この手を離すとき~

もう1度その意味を思い返しながら、目線で一片の雪を追っていると、その雪は1本の桜の木に止まって消えた。

それはまだ細くて若い木で、とても寒そうにしているように見えた。

側に寄って両手でそっと幹に触れると、寒さで固くなっている冷たさが伝わってきて。

そしてここよりも寒い場所にあるおばあちゃんの桜の木は、もっと寒がっているのかもしれないと気になってきた。



「何をしているの? 」


その声に驚いて思わず幹から手を離した。
振り返ると、いつの間にか咲久也先生が側に立っていた。


こんなところを見られてしまうなんて、……最悪。


今朝の騒ぎもあるし、絶対にいろんな意味での問題有りな生徒だと思われてしまったに違いない。

どうして咲久也先生には変なところばかりを見られてしまうんだろう。
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