春の扉 ~この手を離すとき~
思わず自分の耳を疑ってしまった。
わたしはおばあちゃんを……。
大切な人を亡くしているというのに。
……うらやましい?
健太郎くんのその言葉はただ単に“学校をサボれる”ぐらいの気持ちだよね?
毎月お墓入りに行くことは変なことなのかもしれないけれど、おばあちゃんが生きていてくれるのなら、学校を休むことなんてないのに。
そう、おばあちゃんが生きていてくれたのなら……
ずんっ、と心に寂しい気持ちが降ってきて重さを感じる。
でも、誰に何と言われても思われてもいい。
わたしはおばあちゃんの家に帰りたいし、1日でも多くの時間を向こうで過ごしたいから。