春の扉 ~この手を離すとき~

それでいい?


カレンダーは2月に変わっていて、学校全体がバレンタインを意識し始めているように感じてくる。

あの日以来、健太郎くんが教室に来ることも、スマホに連絡が届くこともなかった。


気にしていた文乃たちも今はあきらめてくれたのか、健太郎くんの話題が出てもぎこちない感じもなくなっていた。


時々、廊下で健太郎くんとすれ違ってもお互い目をあわせることはないし。
意識していないとは言えないけれど、でもこれで自然消滅になってよかったと安心していた。


「遠野さん、悪いけれど今日も頼めるかな? 」

「はい、大丈夫です」


職員室でクラス全員分の提出プリントを咲久也先生に渡しながら、わたしは嬉しさを隠しながらうなずいた。

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