春の扉 ~この手を離すとき~
あの日から週1~2回ぐらいのペースで咲久也先生の手伝いをするために放課後に残ることがあった。


教材の準備や資料製作の補助をしたり、使われていない教室の掃除とか。


『少しでも仕事を覚えてください』

ってことで雑用を任されてしまうらしいんだけれど、これは人気のない学年主任からの咲久也先生への嫌がらせとしか思えない。


でもわたしは咲久也先生と一緒に過ごせる時間が心地よくて。

『学年主任ありがとう』なんて思っているのは咲久也先生には内緒にしていた。

お互いの好き嫌いな食べ物や好きな映画の話をしたり。
そんなただの雑談をしながら手伝うのも楽しいけれど、会話がないときでも、気まずいなんて思うこともなくて自然体でいられた。
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