春の扉 ~この手を離すとき~
多分これって、話をまっているような気がするし。
それにここで会話が終わってしまうのはなんとなく悪い気もする。
「自然消滅したんだと思います」
先生の顔を見ながら、そしてわたしの顔を見られながら健太郎くんの話したくはない。
わたしはホッチキスの芯を取り除こうとして、資料と芯のわずかな隙間に爪を入れた。
小さなきつい痛みが指先に走る
「美桜はそれでいいの? 」
「きちんと別れた方がいいとは思いますけど、もう何日も顔を合わせていないし。それに大切な人たちのことを否定されてしまうと、もう話しをしたくもないというか」
「でもそれってさ、彼のやきもちだよね」
それは薄々は感じてはいるけど。
でもそんなことでおばあちゃんへの気持ちや、手紙の相手のことを悪く言われるのは許せない。
そして、思ったよりも固くて動かない芯がわたしをイラっとさせてくる。