春の扉 ~この手を離すとき~
「あいつを見てると口は悪そうだけど美桜のことをもっと知りたいんじゃないのかな? でもうまくできなくてさ、不器用でかわいらしいと思うけど」
「……かわいらしい? じゃあ今の状況はわたしの心が狭いってことですか? いたっ 」
芯が爪と指の間に刺さってきた。
ますますイライラとしてくる。
「僕から見るとそうかな」
見かねた先生が、わたしに変わって芯を取ろうと資料に手を伸ばしてきた。
「……貸して、無理にするとケガしてしまうよ」
先生までわたしが悪いって言うの?
先生なら分かってくれていると思っていた。
でも、わたしが勝手にそう思い込んでいただけだったのかもしれないけれど。
それにその言い方はまるで『健太郎くんと寄りを戻したら』って聞こえてきて、胸が痛くなってくる。
そんなこと先生に思われたくないのに。