春の扉 ~この手を離すとき~
「じゃ、これを職員室まで運んだら今日は解放ね」
先生は話を終わらせるように、できあがった資料を適当に2つに分けると、少ない方の資料をわたしに差し出した。
といっても1人でも充分に持てる量なのに。
「『今日は』って、また明日もなにかあるんですか? 」
わざとめんどくさいって顔をしてみるけれど。
でも本当は咲久也先生と一緒にいられるのがうれしいって思っている自分に気がついている。
「もちろんあるよ。ここに来たからにはできる限りの仕事は体験しておきたいし。それには効率よくね」
「もしかしてその『効率』のためにわたし利用されてます?」
「あ、気付いちゃったかな? ……だめ?」