春の扉 ~この手を離すとき~

「ここじゃ邪魔な奴がいるから。どっか行こうぜ」


健太郎くんはあからさまに先生を邪魔だと言いきった。

そんな配慮すらしない失礼な態度が、ますます幼稚すぎるように見えてくる。


『わたしは話すことなんてない』


と言っても、このまま健太郎くんが帰ってくれるような気はしないし。
それに2人だけで話をしたいっていうことなんだろうけれど、もしもまた、あんなことをしようとしてきたらと思うと……。



でも、やっぱり。

もうハッキリとさせた方がいいのかもしれない。



「先生、……すみません」


わたしが資料を咲久也先生に差し出しすと、先生は受け取るふりをしてわたしの手をしっかりと握ってくれた。

< 174 / 349 >

この作品をシェア

pagetop