春の扉 ~この手を離すとき~
「ここじゃ邪魔な奴がいるから。どっか行こうぜ」
健太郎くんはあからさまに先生を邪魔だと言いきった。
そんな配慮すらしない失礼な態度が、ますます幼稚すぎるように見えてくる。
『わたしは話すことなんてない』
と言っても、このまま健太郎くんが帰ってくれるような気はしないし。
それに2人だけで話をしたいっていうことなんだろうけれど、もしもまた、あんなことをしようとしてきたらと思うと……。
でも、やっぱり。
もうハッキリとさせた方がいいのかもしれない。
「先生、……すみません」
わたしが資料を咲久也先生に差し出しすと、先生は受け取るふりをしてわたしの手をしっかりと握ってくれた。