春の扉 ~この手を離すとき~
驚くわたしの目を、先生はまっすぐに見ている。
そして目をそらさないまま
「嫌がることは絶対にしないであげてくれる? 」
と健太郎くんに釘をさした。
でもこれは健太郎くんへ言葉じゃない。
わたしを守るため、そして安心させるためのお守りのように感じた。
そして後ろから、小さな舌打ちが聞こえた。
「これでもう大丈夫。怖くないから行っておいで」
わたしがうなずき返すと、先生はふっと優しい表情を見せて手を離した。