春の扉 ~この手を離すとき~
「受け取ってもらえる? 」
プレゼントを差し出す健太郎くんに、手を伸ばすことができない。
「わたし、受け取れない」
「なんで? 」
面と向かって別れ話をするのはやっぱり心が苦しい。
足が緊張で小さく震えはじめた。
「ごめんなさい。わたし、健太郎くんに特別な思いを持つことができない。……別れてください」
その途端、申し訳ない気持ちになって涙が浮かんでくる。
「……」
「……本当にごめんなさい」
何も言ってくれない健太郎くんに、頭を下げたけれど、
「美桜、本当にごめん。俺がしたことは最低だと思ってる」
わたしよりもさらに深く、健太郎くんが頭を下げてきた。