春の扉 ~この手を離すとき~

あれは2週間前の文化祭。

体育館で行われていた軽音部のライブで盛り上がっていたときだった。

アンコールのときに、突然ボーカルの生徒が健太郎くんを呼ぶと、ざわめく生徒の中を照れ笑いしながらの健太郎くんはステージへと上がって行った。


にぎやかな性格で学年で人気はあったから存在は知っていたし、それに1度だけ話をしたこともあった。


何度か文乃と純輔から

『バスケ部のメンバーで美桜を気になってるやつがいるから紹介したい 』

と言われていたけれど『彼氏を欲しい』なんて思ったことがなくて、やんわりと逃げていた。


それに、付き合うなら『好きな人』がいい。


まぁ、そんな人はこれまでいなかったけれど。
< 18 / 349 >

この作品をシェア

pagetop