春の扉 ~この手を離すとき~
『1回だけでいいから会って話を聞いてあげて』
と純輔から頭を下げられてしまい
『本当に会うだけなら』
という条件で……。
そのときにやってきたのが健太郎くんで、その場で告白されてしまった。
もちろん初めて会った人だし、好きって気持ちは全くなかったから、わたしはそのときに『お付き合いはできません』とハッキリと断っていた。
それ以来、健太郎くんは純輔たちと話しをするのに教室に来ていたりはしていたけれど、わたしから健太郎くんに話すことはないし、話しかけられたりすることもなかった。
その健太郎くんがステージにあがっている。
歌でも歌うのかな? なんて思っていたら、
「やっぱり諦めきれませんっ! 遠野 美桜さん、俺と付き合ってくださいっ! 」
マイクなんて必要ないくらいの大きな声で叫んできた。