春の扉 ~この手を離すとき~
「冷たいカフェオレの方がよかったかな? 」
「え? 」
「顔が真っ赤になってるから暑そうだなって」
そんなことを言われたらますます熱くなってしまう。
耳まで脈打ちはじめたし……
もう恥ずかしくて、何て答えたらいいのか分からなくなってしまった。
「からかってごめんね。困らせたくなっちゃったから」
……困らせたく?
ずっと笑顔をむけてくれている楽しそうな先生に、わたしは頭を振って抗議することしかできなかった。
「咲久也先生、……今日の放課後に」
放課後のお手伝いのときに、少しだけお話聞いてもらおうと頼もうとしたときだった。
「美桜っ! 」
廊下の向こうから健太郎くんがこちらに向かってきていた。