春の扉 ~この手を離すとき~
スピードを早めながらやって来る健太郎くん。
きっとこのままだと、また先生に突っかかりそうな気がして。
わたしは健太郎くんがこっちに来る前に先生の側を離れた。
「あいつと何してたの? 」
「何ってなに? 普通にあいさつをしていただけだよ」
「……へぇ」
勘ぐられてるよね。
「もう時間だから、健太郎くんも教室に戻った方がいいんじゃない? 」
早く健太郎くんと離れたくてこう言ったけれど。
スマホで時間を確認した健太郎くんは少し首をかしげた。
多分、まだ中途半端に時間があるのかもしれない。
ということは、教室に戻ってこないわたしを探しにきたんだよね。
「じゃあね」
申し訳ないと思いながらも、わたしは健太郎くんを置いて1人で教室に戻ることに成功した。