春の扉 ~この手を離すとき~
どういうことなの?
突然やってきて一緒に帰ると言われても、健太郎くんと帰るつもりなんてないし。
わたしは先生が待っている資料室に行きたい。
「……ごめん、わたし用事があるから」
「どうせあいつの手伝いだろ? そんなの放っておけばいいじゃん」
「手伝うって言ってあるし、勝手に帰るなんて無責任なことできない」
「それって美桜じゃないとだめなわけ? 」
グサッと確信をつかれた。
資料整理は確かにわたしじゃなくてもいい。
誰にでもできる簡単なお手伝い。
……でも
「わたしが頼まれてるから」
「じゃあ俺も手伝うし。人数多い方が早く終わるじゃん」
そんなことになったら健太郎くんがまた咲久也先生に突っかかってしまう。
それに、先生に話を聞いてもらうこともできない。