春の扉 ~この手を離すとき~


「別に手伝わなくてもいいから。そんなことより部活には行かないの? 試合が近いんでしょ? 」


智香が気になってチラッと視線を向けると、智香は眉をひそめたまま健太郎くんを凝視していた。


「そうよ健太郎、あんた何を言ってるの? 」

「だから休むって言ってんじゃん。しつけーなー 」


智香が健太郎くんの腕を持ったけど、健太郎くんはめんどくさそうに振り払った。

このままじゃ、ますます智香が辛くなる。
それに2人の間に亀裂が入ってしまう気がする。


「まぁまぁまぁ、智香落ち着いて」

「健太郎は美桜と仲直りできてうれしいんだよ、な? 」


文乃と純輔がなだめるように入ってきたのをいいことに、健太郎くんはわたしのカバンを肩に担いだ。


「ちょっと待ってよっ! 」


智香の声が大きくなっていく。

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