春の扉 ~この手を離すとき~
どうしよう。
先生、待ってるのに…
仕方なく健太郎くんのあとに続きながら、わたしは何度も学校をふりかえった。
やっぱり……、黙って帰るなんてできない。
健太郎くんはわたしが足を止めたことすら気づかずに歩いていく。
「わたし学校に戻る。だからカバン返して」
わたしは聞こえるように呼びかけた。
足を止めた健太郎くんは振り返ると、開いている距離に少し驚いたようだった。
「そんなにあいつが気になる? 」
「黙って帰ることが悪いなって思ってるだけで」
「……本当にそれだけ? 」
「それどういう意味なの? 」