春の扉 ~この手を離すとき~
舞い降る桜の中に飛び込んで、やみくもに追いかけるわたしの手のひらを、花びらたちはからかうようにかすめていく。
『無理につかもうとするから、桜が嫌がって逃げてしまうんだよ』
『だってとれないんだもん。もうやらないっ! 』
『ほら、こうやって……、ね』
『……とれたっ! おばあちゃんみて、とれたの』
期待に胸を膨らませていた願い事は、形を変えて叶ってしまった。
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