春の扉 ~この手を離すとき~

静まりかえる観客。

そしてふつふつとざわつきが沸きはじめ、健太郎くんの視線の先を探しながら集まってくる、興味と期待をこめた生徒たちの視線。
その全ての視線がわたしに注がれたところで、また生徒たちは静まりかえった。

もしかして同姓同名の人が後ろにいるのかと思って振り返ったけれど、後ろの生徒の視線もわたしを興味津々に見ていた。


わたしの横では文乃と純輔が楽しそうに『返事、返事』とせかしているし。


これってサプライズのつもり?


もちろん付き合うつもりなんてこれっぽっちもない。

だけど、ここで断れば健太郎くんがみんなの前で恥をかいてしまう。それにライブで盛り上がっている中、期待をしている生徒たちの雰囲気をしらけさすんじゃないかと思ってしまい。


うなずくしかなかった。


そのとたん、ライブ以上に盛り上がる生徒たちの歓声。


ボーカルの生徒が
『健太郎、美桜おめでとうっ! 』
って叫んで流行っているラブソングを歌いはじめたし。



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