春の扉 ~この手を離すとき~
約束
学校についたとき、校舎はすでに真っ暗で誰もいないことを教えてくれていた。
わたしは重く閉じられている校門に手をついて呼吸を整えた。
走ってきたせいか体が少し汗ばんでいて、ハァ、ハァ、と吐き出される息は白く、そしてはかなく消えていった。
こんな時間まで先生がいるわけないって分かりきっていることなのに。
でも先生に会いたかった。
会ってちゃんと謝りたかった。
嫌われてしまっていたらどうしようって不安になって。
虚しさで泣きたくなってくる。
でもここで泣いたらもっと虚しくなる。
もう一度校舎を見ても、やっぱりどこの教室にも灯りはついてはいなくて。
……帰ろ
汗ばんでいた体が、寒さで急激に冷えてくる。
だからって走って帰る気力なんてもう残ってはいない。
わたしは虚しさと疲れた足の重さをひきずるように、来た道をもどりはじめた。
涙がじんわりとたまりはじめ、視界がにじんできた。
やだ、泣きたくないのに。