春の扉 ~この手を離すとき~
手をつないだままわたしの歩幅に合わせてくれる先生。
まばたきをするたびにこぼれるわたしの涙をみて、先生は微笑んでいる。
不思議。
さっきまで虚しい涙だったのに、今は安心した涙に変わっている。
学校から少し離れた路地に先生の車は停めてあった。
この前を通ってきたのに、さっきは少しでも早く学校にたどり着きたくて見えていなかった。
「はい、どうぞ。……美桜? 」
先生は助手席のドアを開き、エスコートしながらわたしを乗せようとしてくれたけれど。
思わず乗り込むのを躊躇してしまった。
「乗りたくないの? 」
そんなことじゃなくて。
首をかしげる先生に頭をぶんぶんと振って答えた。