春の扉 ~この手を離すとき~

先生はハハハと乾いた笑いをすると、大きくため息をついた。


「あいつは図太いというか、羨ましいぐらいにたくましいね。伝わらない相手ってたまにいるけれど、……まさにそれだね」


そして先生はまたため息をついた。
合わせてわたしもため息が出てしまった。


「でもさ、美桜が直接言っても伝わらないのなら、その幼なじみさんに協力してもらう方がいいんじゃないのかな? 」


智香に協力をしてもらう……。


でもそれは智香にあの日の出来事を話すことになるかもしれない。

それを聞いたら智香はどれだけ傷ついてしまうんだろう。

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