春の扉 ~この手を離すとき~
「美桜がつらい立場になるのは分かるけれど、でもこのままだとみんなバラバラになってしまうよ」
「……そうですよね」
「それか美桜がされてしまったように、逆に全生徒の前で『別れます』と宣言するかだよね? 」
「みんなの前で?! 」
試しに、現実離れした大胆すぎる作戦を頭の中でイメージしてみると、言葉を失ってしまった。
けれど先生は
「あいつのことはそこまで気にしなくてもいいと思うけれどね。人一倍たくましいみたいだし」
と付け足してくる。
これって本気で思っているってこと?
でも小心者のわたしにそんなことできるわけがない。
やっぱり智香に相談をしてみることが解決に近づく気がするけれど。
もう1度頭の中で、“全生徒の前で宣言するわたし”をイメージするわたしに、苦笑いを浮かべる先生。
「ごめん、冗談だよ」
「……もうっ! 」
思わず笑ってしまった。
でも話を聞いてもらえたことで少しだけ心が軽くなった気がする。