春の扉 ~この手を離すとき~
「……会いたかったです」
あまりにも自然と出た言葉。
勇気もなにも必要なく、心からの思いが溢れ出てきた。
灯りのついていない校舎を見たときにとても寂しい気持ちになってしまった。
健太郎くんと別れることができなくて、先生との時間を押し通すことができなくて。
先生は呆れていたり軽蔑したかもと思ってた。
でも先生はいてくれた。
わたしを待っていてくれた。
だからもう一度……。
「わたし、……先生に会いたかったです」
「大変よく言えました。……ありがとうね」
先生はうれしそうにわたしの頭をポンポンと優しくなでてくれて。
でもそれがくすぐったくて恥ずかしくて、目を閉じながら思わず笑ってしまった。