春の扉 ~この手を離すとき~

「手作りチョコでないとこの傷ついた心は立ち直れない気がする」

「はい、期待しててくださいね」


手作りチョコが欲しいなんて可愛いリクエストだなって思うけれど。
もうかわかうのはやめておいてあげようかな。


「じゃあさ、14日はここで待ち合わせしようか? 」

「はいっ」

「時間はそうだね、……暗いけれど20時はどうかな? 一人で来るのは無理そう? 」

「大丈夫です」


先生に会えるのならいつでも何時でもいい。
それにこの時間なら今みたいに行き交う人はほとんどいないはずだろうし。


「それでさ、その時に。……美桜に伝えたいことがあるんだよね」

「……なんですか? 」


「その時に言うよ。だからここで必ず会おう。……いいね? 」


咲久也先生はわたしの頭を優しくおさえると、うなずかせてくれた。

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