春の扉 ~この手を離すとき~
それって……、
今日は何もないのにわたしを呼んでくれていたってこと?
そんなことを言われたらわたし、
……本当に期待してしまう。
「咲久也先生……」
「ん? 」
思わず名前を呼んでしまったけれど。
この気持ちをどう言葉にすれば、どう伝えればいいのか分からない。
わたしは顔を伏せると頭をぶんぶん振るしかなくて。
どうしよう。
絶対に変に思われてる。
「ねぇ美桜? 手伝ってくれたお礼にデートしよっか? 」
……今、デートって言った?
顔をあげると、先生は首をかしげたままわたしの返事を待っている。
デートって、それって恋人がするものよね?
先生がわたしを誘ってくれたってことよね?
「しますっ! デートしますっ! 」
「そんなに意気込まれたら照れるな」
ふふっと笑う先生。
思わず座りなおして姿勢を正した自分が少しはずかしいけれど。