春の扉 ~この手を離すとき~

とにかく今は雪と寒さをしのげる場所が欲しい。
そして座りたい。

イートインがあるコンビニが近くにないかなと、暗い夜道を少し歩くと公園があった。
ブランコと滑り台とベンチがあるだけの小さな公園。


少しだけ休んで、すぐに探しはじめよう


そう思って公園に入り、ベンチの雪をはらうと、わたしは崩れ落ちるように座りこんでしまった。

熱い顔にあたる雪は心地いいけれど。

熱いのに震えがとまらない体を、ベンチから伝わってくる氷のような冷たさが拍車をかけていく。

これ以上、雪の中をさ迷うのは無理なような気がしてきた。


駅員さんがいなくなったらやっぱり駅まで戻ろう
雪ぐらいは避けれるだろうし


なんて思ってはいるけれど、もう体は動きそうになかった。


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