春の扉 ~この手を離すとき~

人恋しくなってスマホを取り出してみたけれど、半分もない充電に気持ちが焦ってしまう。
それにアドレス帳を開いてみても、誰に助けを求めればいいのかも分からない。


わたし、一人ぼっちなんだ


自分の存在が必要のないもの、無意味なものに感じられて虚しくなってきた。

その虚しさはみるみるうちに増えていき、胸をぎゅうぎゅうとはち切れそうに膨らませていく。

わたしは虚しさを押し出すようにため息を吐きながら、夜空を見上げた。
音もなくふる雪と欠け始めた月が、雲にかすめられながら浮かんでいる。
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