春の扉 ~この手を離すとき~
先生が好きなのはあの女の人なんだよね。
はじめて好きになった人なのに……
わたし、健太郎くんにずっとこんな思いをさせていたんだ。
もっと強く伝えればよかったのかもしれない。
もっと強く態度に表すべきだったのかもしれない。
後悔ばかりが押し寄せてくる。
健太郎くん、ごめんなさい。
そして、……智香も。
わたしは智香の大切な人を苦しめていたんだね。
智香はもっとずっと辛い思いを抱き続けていたはずなのに。
なのにわたしは酷いことを言ってしまった。
本当に最低なのはわたし。
「もう、やだ……、」
友達を傷つけてしまったのがいや
先生への気持ちを持っているのがいや
なのに誰かにすがりたいと思ってしまう自分がいや
ただ“好き”という気持ちを持っただけなのに。
誰かを好きになれば誰かが傷ついている。
なのに……、それでも……、
わたしは先生のこと……