春の扉 ~この手を離すとき~
このどうしようもない気持ちは、まるでおばあちゃんが死んでしまったときみたい。
おばあちゃんをどんなに求めても、おばあちゃんには会えなくて。
そして“お母さん”をどんなに求めても、あの人は振り向いてはくれなかった。
思い出したくない悲しみが、ひとりぼっちになってしまった寂しさが、どんどんと大きくなってわたしを覆いはじめた。
浅い呼吸をしながら、声にならない泣き声が出てしまう。
暖かさがなくなったときの苦しさを知っているから、求めることもやめていたのに。