春の扉 ~この手を離すとき~
カーテンを抜けて部屋を照らそうとする太陽の淡い光。
光の強さで今はお昼。
そして、ここが自分のベットだということなのは分かった。
昨日は咲久也先生に部屋まで運んでもらって、お薬を飲ませてもらったことは覚えている。
そして、先生がつらそうな顔をしていたことも。
どうして、あんな顔をしていたの?
言いたいことだけを言って、先生の話を聞こうとしなかったのはわたしだけれど。
「……、……先生? 」
って呼んでも返事がないのは分かっている。
もう学校も始まっている時間なのに。
だけれど“側にいてくれるのかも”という淡い期待が消えるとき、心がヤスリにかすられたように痛んだ。
先生がこの家に入ったってことは、ここに1人で住んでいることがばれてしまったかもしれない。
だって他の部屋は空っぽだし。