春の扉 ~この手を離すとき~

先生はボールをわたしから取ると、倉庫のかごに見事に投げ入れた。
そして、まくっていたシャツの袖を伸ばして少し面倒くさそうにボタンを留めはじめた。

その姿が『大人』って感じの雰囲気で、また見とれてしまう。


「ん? どうかしたの? 」

「いえ、……なんでもないです」


わたしの視線に気づいた先生が、こっちを見たけれど『見とれていたんです』なんて言えるわけがない。

また、ふふっと笑う先生。

きっとごまかしきれてはいないんだと思う。
油断してしまった自分が恥ずかしい。


「それじゃ、一緒に帰ろっか。家どこ? 」

「……へ? 」

















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