春の扉 ~この手を離すとき~

「俺らさ、二人がケンカしてるだけかと思ってた。健太郎のやつ粘ったなー」

「美桜にその気がないんなら付き合うこと自体成立しないじゃん。もう破局でいいんじゃないの? 」


いざ話してみると、すんなりと受け入れてくれる文乃と純輔に驚いてしまったし、頼もしくも感じてしまう。


「そんな簡単なものなのか? 」

「男って未練がましい生き物だもんねー」


悲しげに聞く純輔に文乃はあっさりと言い放った。

純輔のその悲しげな表情は、健太郎くんを思ってなのか、それともいつ自分が文乃にフラれるのかと恐怖を感じてなのかは分からないけれど。



「でもそれなら、さっきの“咲久也を返して女”だって同じだろー」


純輔の詩織の呼び方にトゲがある。

まぁ、あれだけ泣きわめかれたら引いてしまうのも無理はないだろうけれど。


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