春の扉 ~この手を離すとき~
「にしても、あいつはあんな女がいいわけ? 」
「それはないでしょー。先生にフラれた原因を美桜に転嫁してるだけっぽくない? 」
「だよなー。あいつ美桜のこと気に入ってるの分かったもんなー」
文乃と純輔はしみじみと納得したようにうなずいた。
「仲良くはさせてもらっていたけれど、咲久也先生にとってのわたしは、あくまでも生徒の一人としてだよ」
首と手を振って否定するわたしに二人は笑いあって
「そんなわけないじゃん」
と否定を返してくるけれど。
「だって学校からいなくなるのも聞いていなかったし」
「それ、まじだったの? 」
それは予想外だったみたいで、二人は驚いたようにまた顔を見合わせた。