春の扉 ~この手を離すとき~
「でもね美桜。今度から一人で考えこむのは禁止ね? あたしに言いにくいことなら智香に相談すればいいんだし、ね? 」
「うん、ありがとう」
わたしは智香に抱きついたように、文乃にもぎゅっと抱きついた。
「よしよし。じゃあとりあえず今日は何も考えずに寝ること」
「……うん」
あいまいな返事しかできない。
だって色々考えてしまわないわけがないから。
そんなわたしの気持ちは文乃には筒抜けのようで、わざときつく抱きしめ返してきた。
「こーら。智香が情報持ってくるまでは推測でしかないんだから、悩むだけ損だよ。分かった? 」
そう念を押されてしまった。
確かにそのとおりだね。
「はい。じゃあ今夜はおとなしく寝ます。文乃、純輔、ありがとね」
わたしは文乃から離れると、手を振りながらマンションへと戻った。