春の扉 ~この手を離すとき~
店内には、話に夢中になっている学生っぽい数人のグループや、休日なのに仕事中なのかピザトーストを片手にノートパソコンに向かっている会社員っぽい人がいる。
智香を探しながらどこに座ろうかと見渡していると、隅の席に座っている智香がわたしに気づいて手を振ってくれた。
飲み物を買って席につくと、智香はホットコーヒーを冷ますようにゆっくりと混ぜていた。
相変わらずお砂糖もミルクも入れないなんて大人っぽいな、なんて思っていると、智香も同じことを逆に考えていたみたいで。
「美桜らしいね」
そう言って、わたしが持ってきたホイップがたっぷりと浮かんでいるカフェラテを見ながらクスクスっと笑ってきた。