春の扉 ~この手を離すとき~

「あとは、美桜に先生を『盗られた、奪われた』って連呼していたけれど、話を聞いていると付き合っていたって感じでもないんだよね」

「……彼女じゃないってこと? 」

「うん。同じ大学とは言っていたけれど、一方的で強烈な片想いって感じかな。仲は良かったのかもしれないけれど、まぁフラれる原因は本人にありそうだよね」


苦笑いをする智香。

確かに、あれだけ激しい人だと穏やかな咲久也先生も引いてしまいそうな気はする。

雪の公園でのわたしも人のことは言えないけれど……


「でもね、あの人はバレンタインに先生と……」


簡単に思い出せることができるあの光景。

それでわたしは耐えきれなくなって……

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