春の扉 ~この手を離すとき~
……2年後に出会ったところで、嫌われているのならどうすることもできないのに。
今でさえ触れることのできない先生の存在が、砂時計の砂が落ちていくかのように止まることなく消え落ちていく気がする。
……え?
待って、2年って……。
『卒業したら、僕と会ってください』
先生は照れながら、でも真っ直ぐにそう言ってくれた。
2年後のわたしたちの大切な約束
……咲久也先生
先生の名前が思わず声に出そうになって、両手で口をおさえた。
胸が切なくなって、涙が溢れはじめる。
「……わたし、先生と大切な約束をしてる」
「それって信じれる約束なんだね? 」
……うん、……うん、
わたしは、わたし自身に言い聞かせるようにうなずいた。
智香はどんな約束をしているのかは聞いてこなかった。
けれど、安心したようにわたしの頭をよしよしとなでてくれた。